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裏口の方にルイズ達が向かったことを確かめると、キュルケはギーシュに命令した。 「じゃあおっぱじめますわよ。ねえギーシュ、厨房に油の入った鍋があるでしょ」 「揚げ物の鍋のことかい?」 「そうよ、それをあなたのゴーレムで取ってちょうだい、取れたらそれを入り口に向かって投げてね。」 「いいけど、[錬金]で油を作る方が早くないかい?」 「馬鹿ね、ギーシュ。少しでも消耗が少ないほうがいいに決まってるでしょう?それに、ゴーレムは再利用できるわよ。」 「ううむ・・・」 「さっさと行く!」 「はいはい。」 「ハイは一回!」 「はい」 ギーシュは、テーブルの陰で薔薇の造花を振った。 花びらが舞い、青銅の戦乙女がその場に現れる。それは矢の雨の中ぴょこぴょこと厨房に走った。 柔らかい青銅に、何本も鋼鉄の鏃がめり込む。 「もっと厨房の入り口付近に出せばよかったじゃないの」 キュルケが、手鏡を覗き込み、化粧を直しながら呟いた。 「今の僕じゃあ難しいんだよ、そんなことよりきみはこんなときに化粧するのか。」 ギーシュは呆れつつも、何とか厨房にたどり着いたゴーレムに油の鍋を投げつけさせた。 キュルケは杖をつかんで立ち上がる。当然のように飛んで来た矢を、タバサが風を起こし吹き飛ばした。 「だって歌劇の始まりよ?主演女優がすっぴんじゃ、しまらないじゃないの!」 キュルケの火球が、撒き散らされた油に引火し、増幅されて入り口周辺を火の海に変えた。 それは傭兵たちに次々と燃え移り、何とか消そうとのたうち回る被害者が、生きた炎の壁となって更に被害を広げていく。 「この地獄絵図が、歌劇ねえ。過激、の間違いじゃないのかな」 ギーシュがぽつりと呟いた。 岩ゴーレムの肩の上、フーケは舌打ちをした。 突撃を命じた傭兵たちが炎に巻かれて転げ回っている。隣に立った仮面の貴族に向かって不満を呟いた。 「ったく、やっぱり金で動く連中は使えないわね」 「あれでよい」 「とてもそうは見えないけど」 「倒さずとも、かまわぬ」 「あのねえ、それじゃ何のためにわたしはいるのよ」 しかし、男は答えず一方的にフーケに告げた。 「俺はラ・ヴァリエールの娘を追う、お前は好きにしろ。合流は例の酒場で。」 「は?」 言うが早いか、男は風のように暗闇へ消えた。 「ったく、勝手な男だよ。」 下を見ると、入り口から噴き出す炎の風により弓兵までが壊滅状態に陥っている。 逃げたら殺すとは言ったものの、殺す手間の方が惜しい。 フーケは下に向かって怒鳴った。 「ええいもう!頼りにならない連中ね!どいてなさい!」 ゴーレムが地響きを立てて、入り口に近づく。 さて、どうしてくれようかしら。 ・・・やっぱり、建物にはアレよね。 岩ゴーレムの腕を、螺旋状に変化させて思い切り突き出した。 「おっほっほ!おほ!おっほっほ!」 酒場の中では、キュルケが勝ち誇って笑い声を上げていた。 「勝ち誇ってるとこ悪いんだけどさ」 ギーシュが突っ込みを入れた。 「なによ?実際勝ったも同然じゃないの」 「じゃあ、窓から見えるあれは何なんだい」 フーケのゴーレムが、地響きを立てて接近してくる。 「あは、あはは、あははははは」 キュルケの笑い声が乾いたものに変わった。 「タバサ、ギーシュ」 「なんだね?」 「逃げるわよ」 タバサは頷いた。ギーシュは首を振った。 「逃げない!僕は逃げません!」 「・・・あなたって、戦場で真っ先に死ぬタイプなのね」 タバサは近づくゴーレムを見て、何か閃いたらしい。ギーシュの袖を引っ張った。 「なんだね?」 「花びら。たくさん」 「それがどーしたね!」 「いいからタバサの言うとおりにして!」 キュルケの剣幕に、ギーシュは造花の薔薇を振った。大量の花びらが宙を舞う。 舞った花びらがタバサの風の魔法で、ゴーレムに向かっていく。 「それで?」 タバサが呟いた。 「錬金」 ゴーレムの肩に乗ったフーケは、自分のゴーレムに花びらがまとわりついたのを見て、鼻を鳴らした。 「何よ。贈り物?花びらで着飾らせてくれたって、手加減なんかしないからね!」 言いつつも、念のため少し様子を見る。 その時、まとわりついた花びらが、ぬらっと何かの液体に変化した。 土のエキスパートであるフーケはすぐに気づいた。錬金の呪文である。 油の臭いが立ち込め、それに合わせるように火球が飛んできた。 なるほどねえ。でも、この“土くれ”に錬金で挑むなんて、10年早いわ。 ニヤニヤ笑いながら既に準備していた呪文を完成させる。 「錬金!」 “トライアングル”の強力な錬金を受けた油は一瞬で土へと還り、火球に対する盾となりつつさらさらと地面に落ちた。 「さてと、余計な何かをされる前に建物ごと生き埋めにしてやるとするかねえ」 フーケは改めてゴーレムの腕を振り上げた。 「や、やっぱりダメじゃないか!!」 「思った以上に戦いなれてるわねえ」 「・・・」 キュルケたちは三者三様に落胆した。 「さあ、逃げるわよ!」 「いや、まだだ」 ギーシュが真面目な顔で呟いた。 キュルケが反論する。 「土ドットのあなたが、フーケに対してなにができるっての?」 「いいや、できるね!」 「馬鹿なこといってないで、手遅れになる前に行くわよ!」 勝ち誇ったフーケは、傭兵たちを退避させると思う存分暴れまわった。 以前捕えられた恨みもあるが、それ以上に貴族用の高級宿である“女神の杵亭”の存在自体がわりと許せなかったのだ。 「まずは裏口からブチ崩そうかねえ。」 敵を逃がさず建物を完全に解体すべく、端から潰していく。 しばらくすると、“女神の杵亭”は瓦礫の山と化した。 「さあて、あいつらはちゃんと埋まってるかしら?」 フーケは勝利を確認しようと、瓦礫の上へとゴーレムに乗ったまま踏み出した。 「な、何だってんだい!」 足元が抜け、バランスを崩したゴーレムが崩落しながら更に埋まっていく。 「よ、よくもよくもよくもおおおお!ガキ共に2度も土をつけられるなんて!」 ガリガリと引っかくような音がして、少し離れた地面からヴェルダンデに乗ったギーシュが現れた。 タバサとキュルケも後に続き顔を出す。 「ね、うまくいっただろう。なんせ、僕の可愛いヴェルダンデは[土竜]だからね。」 「シルフィードも凄いと思ってたけど、あなたの使い魔も滅茶苦茶ね。岩盤を無理矢理掘り進むなんて」 キュルケが呆然と呟いた。 ギーシュが胸を張って答える。 「鉱石の発掘だってお手のもんさ」 「絶対、主の実力に見合ってないわよ」 「失礼な、僕はまだ成長期なんだよ!」 「そうかしら」 ヴェルダンデが誇らしげに鼻をひくひくさせている頃、桟橋へとセッコたちは走っていた。ワルドが建物の陰に滑り込んで階段を駆け上がる。 「なあー、何で登ってんだよお?」 セッコの呟きは無視された。地理がわからない以上ついていくしかない。 登りきると異様な光景が目に飛び込んできた。 山ほどもある巨大な樹に、船が生っている。 「ほえ・・・何だあこれ・・・」 「何って、桟橋よ。あれが船。」 ルイズがこともなげに言った。ワルドも全く普通な様子だ。 オレがおかしいのかなあ? To be continued…… 戻る< 目次 続く
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図書室の外で、キュルケは目を光らせていた。 タバサがさきほど図書室に入っていくのを見たからだ。 それだけなら別にこんなことをする必要などないのだが、あそこには先にDIOがいたはずだ。 そのことを思い出したキュルケは胸騒ぎがし、しかし踏み込むわけにもいかず、こうして図書室の外で様子を窺っていたのだ。 ---ガチャリと音がして、ドアが開いた。 キュルケは身構えた。 そこから出てきたのは、幸運なことにDIOではなくタバサであった。 どうやらなにごともなかったようだ、とキュルケはひとまず安心した。 タバサはチラリとこちらを見ただけで、何も言わずにトコトコと立ち去ろうとした。 いつもと違って幾分軽快な足取りである。 機嫌が良いのだろうか、とキュルケは思って声をかけた。 「何?」 と素っ気ない返事と共に、タバサは振り向いた。そのタバサの顔を見たキュルケは、違和感に眉をひそめた。 タバサが幾分特殊な環境にあるだろうことをキュルケは何となく感じ取っていた。 『タバサ』などという偽名を使っていることから、複雑なお家事情があるのだろう。 タバサが心に傷を負っていることを知っているキュルケは、タバサがいつも暗い影を背負って生活していることを理解してもいた。 ……ならばこれは一体どういうことか? タバサはいつもどおりの無表情だ。 しかし付き合いの長いキュルケは、いつもの彼女のソレではないことを敏感に察した。 表情に影が全くない。 まるでつかえが取れたような、肩の荷が下りたような、実に晴れ晴れとした雰囲気だった。 考えられる原因は一つしかない。 「タバサ……!?何かあったの?アイツに……DIOに何かされた?」 タバサがゆっくりと答える。 まるで別人のようだと、キュルケは感じた。 「別に……なにもない。…新しい本を、借りただけ」 そう言って小脇に抱える本を見せるタバサだったが、キュルケには全く目に入らなかった。 彼女は本当に、私の知っているタバサなのだろうか……? キュルケは胸に去来するザワザワという感覚を抑えられない。 「…………」 そんなキュルケの内面を悟ったのか、タバサはニッコリと微笑んだ。 「大丈夫だよ、キュルケ。大丈夫」 綺麗な笑顔だと、キュルケは場違いにも思った。太陽のような、華やかで、可憐で、鮮やかで…………残酷な笑顔だった。 呆気に取られて、歩み去るタバサを引き止められなかった。 先ほどのタバサの笑顔……、キュルケは我が身が張り裂けそうな思いだった。 虚空に伸びる手は、タバサを捉えることはなかった。 3へ
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翌朝・・・。 ルイズとワルドは、結婚式の準備をしていた。 といっても、今まさに攻め落とされんとしている城で派手なことができるわけもなく、 ウェールズ・・・アルビオン王家から借り受けた新婦の冠をルイズの頭に乗せ、同じく純白の乙女のマントを纏うだけという単純なものではあったが。 「ねえワルド、本当にここで結婚式をするの?」 昨日はセッコに手紙を始末されたショックもあって、勢いで“今結婚しよう” と言うワルドに同意してしまったものの、一晩空けて冷静になってみると、やはり何か違う気がするのであった。 「僕が相手じゃ不満かい?」 「・・・」 そうじゃなくて、ここで今するのが気に入らないのよね。 ルイズとしてはささやかに式を挙げるなら、帰ったら任務のことでどうせ会う、アンリエッタの前で誓いたかったのだ。 それに、ある意味では全権大使とも言える自分が、いくら亡命を勧めても聞かなかった頑固な武人であるウェールズ皇太子。 その最期の思い出が、昨日会ったばかりの他国人の結婚式だなんて。 そんなの、悲しすぎるわよ。 それに、いや、そんなこと以上に、何故か心は不安でいっぱいだ。 その時、ワルドがルイズの手をとった。 「さあ行こう、ルイズ。 始祖ブリミル像の前で、ウェールズ皇太子が待ちわびているぞ」 「え、ええ」 ワルドに手を引かれ、戦の準備で誰もいない滅び行く城の廊下を、ウェールズの待つ礼拝堂に向かって歩く。 昨日は、わたしとセッコ以外、皆笑っていた。 まあセッコは、悲しんでいるという感じではなかったけれど。 今も、隣のワルドは幸せそうに微笑んでいる。 きっと、ウェールズも笑って死を迎えるのだろう。 何故、わたしだけが寂しいのかしら。 わたしが・・・おかしいのかしら?それともわたしが、何か悪いことを? 「ルイズ!行き過ぎているぞ、礼拝堂はこっちだ!」 「あ、そう、そうね。ごめんなさい、ワルド」 さてその頃、鍾乳洞に作られた港の中、セッコはニューカッスルから一足先に脱出するため、 疎開する人々に混じってイーグル号に乗り込む列に並んでいた。 「なあ、相棒」 「どうしたあ?」 「なんか体がスースーして気分悪いんだけどよ」 「人前で鞘から抜くと、ルイズが怒るんだから仕方ねーだろお。喋れるだけいいと思え」 「むう」 デルフリンガーの鞘は、話し相手を欲しがったセッコによって、そのまま喋れるよう穴だらけにされていたのだった。 「ところでよ、娘っ子を放置してきて本当によかったのか?」 「命令されたらオレにはどうしようもねーよ。さすがに[死ね]とか言われたら必死で逃げるけどなあ。」 「難儀なもんだな、まーあのワルドって奴も強そうだし、なんとかなるかね」 「オレは、あいつ嫌いだけどな。ルイズの婚約者じゃなかったらぶち殺したいぐらい。」 「おいおい、やっぱ戻った方がよくねえか相棒」 ちょっと考えてから、答える。 「いや別に、オレの目の前にいなけりゃそれで。」 「ははは、ちげえねえ」 ルイズとワルドが礼拝堂につくと、皇太子の礼装に身を包んだウェールズが、一人で始祖ブリミル像の前に佇んでいた。 「・・・お一人なんですか?」 ルイズは無礼な疑問を口に出してしまった事に気づき、慌てて手を当てた。 「すまないね。できることならもう少し豪勢にしてあげたいが、皆は戦の準備で忙しいんだ。」 「も、申し訳ありません、殿下」 「気にしないでくれたまえ。では、子爵」 「はい」 ワルドが、仰々しく一礼した。 「それでは、式を始める」 王子の声が、ルイズの耳に届く。 しかし、ルイズの心は結婚を前にしているというのに、様々な疑問が渦を巻き、憂鬱であった。理由はわからない。 「新郎、子爵ジャン・ジャック・フランシス・ド・ワルド。 汝は始祖ブリミルの名において、このものを敬い、愛し、そして妻とすることを誓いますか」 ワルドは重々しく頷いた。 「誓います」 ウェールズはにこりと笑って頷き、今度はルイズに視線を移した。 「新婦、ラ・ヴァリエール公爵三女、ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール・・・」 朗々と、ウェールズが誓いのための詔を読み上げる。 そう、わたしって今憧れの婚約者と結婚しようとしてるのよね。 それなのに何故、何故こんなに不安なのかしら。 ウェールズ達が死に行こうとしているから? それは悲しいことだけれどわたしと直接は関係ないわ。 セッコがアンリエッタの手紙を握り潰したから? いや、手紙が敵の手に永久に落ちなくなれば根本的に問題は起こらないわけだし、セッコはあいつなりに最善の手を取ったのよね。 お仕置きは必要だろうけど、少なくとも不安とは違う。 結婚したらセッコを常に監視するわけにいかないから? 確かにあいつは放っておくと極めて危険だ。 でも、考えてみれば傍においておかなくてもいくらでも手はある。 今気にやむようなことではない。わたしはそんなに神経質ではない・・・と思う。 じゃあ、何で不安なのよ!この疑問は何! 「新婦?」 「・・・新婦?」 ウェールズが心配そうにこっちを見ていた。はっとして顔を上げる。 こんなとき・・・疑問を感じたとき、あいつならどうするだろう? この世界の何よりも無邪気で、残酷で、正直で、そして純粋な自分の使い魔。 「緊張しているのかい?仕方がない。初めてのときは、ことが何であれ、緊張するものだからね」 にっこりと笑って、ウェールズは続けた。 「まあ、これは儀礼に過ぎぬが、儀礼にはそれをするだけの意味がある。 では繰り返そう。汝は始祖ブリミルの名において、このものを敬い、愛し、そして夫と・・・」 違う、違うのよ、ウェールズ殿下。わたしは緊張してなどいない。 ルイズは首を振った。 ただ、何かが引っかかっているのよ。 誰も答えを出してくれない悩みが、疑問があるとき、どうすればいい? この世で、一番信じられるものは何? それは・・・ 「新婦?」 「ルイズ?」 二人が怪訝な顔で、ルイズの顔を覗き込む。 わたしは、あいつに影響されているのだろうか? いや、元々そうだったのだろう。この世で一番信じられるものは、“わたし”。 自分が納得できないことは、今やるべきではないこと。 ルイズは、ワルドに向き直った。 「どうしたね。ルイズ。気分でも悪いのかい?」 「気分は、悪くないわ」 「なら、誓おうじゃないか」 「いいえ、ワルド。今は、結婚できないわ」 ウェールズは首をかしげた。 「新婦は、この結婚を望まぬのか?」 「そのとおりでございます。お二方には、大変失礼をいたすことになりますが、私はこの結婚を望みません。少なくとも、今は」 ワルドの顔に、さっと朱がさした。ウェールズは困ったように首をかしげ、残念そうにワルドに告げた。 「子爵、まことにお気の毒だが、花嫁が望まぬ式をこれ以上続けるわけにいかぬ」 ワルドはウェールズを無視してルイズの手をとった。 「ルイズ・・・緊張してるのかい?きみが、僕との結婚を拒むなんて」 「ごめんなさい。ワルド。この旅で判ったんだけど、何故かあなたと二人でいると不安になるのよ。 女神の杵亭に居た時。桟橋で、セッコが錯乱してあなたに殴りかかったとき。それに・・・。 もちろんワルド、あなたのことは憧れだし、少なくとも嫌いじゃないわ。でも、今はだめ。今は結婚できない」 ワルドの表情が変わる。 「世界だルイズ。僕は世界を手に入れる!そのためにきみが必要なんだ!」 豹変したワルドに怯みながらも、ルイズは力強く首を振った。 「わたしの不安は、そういうことだったのね、ワルド。世界なんかいらないわ」 ワルドは両手を広げると、ルイズに更に詰め寄った。 「僕にはきみが必要なんだ!きみの能力が!きみの力が!」 何を言っているの?こんなワルドって、あの優しかったワルドがこんなに・・・ いや、一度だけ、一度だけこんなワルドを見たことがある。 ラ・ロシェールで、セッコと手合わせしたときに。 あの時、わたしはセッコがキレていたのだと思っていた。 あいつが暴走しやすいのはいつものことだったし。 盗賊をバラバラにしたのを前の晩見てしまったから、余計そう思ったのかもしれない。 ・・・でも、違ったのね。本当に“キレて”いたのは、ワルドの方だった! 「ルイズ、いつか言ったことを忘れたか! きみは始祖ブリミルに劣らぬ、優秀なメイジに成長するだろう!きみは自分で気づいていないだけだ!その才能に!」 「ワルド、あなたまさか・・・」 ルイズの心が、急激に醒めていく。 自らに酔っているかのように昂りつつあるワルドと対照的に。 セッコはイーグル号に乗り込んだ瞬間、突然言い知れぬ不安に襲われた。 身震いし、目をこする。 「おい、どうした相棒!」 「おかしい。」 「なんだ、疲れてんのか?」 「違う、オレは昨日たらふく飯を食ったし、よく寝た。」 でも、変なものが見える、これは・・・昨日の城?・・・ウェールズ・・・と? 「なんなんだよ相棒」 「左目にワルドが見える、そのせいで胸クソわりい。あと左手が熱い。」 印が、光っている。なんだこりゃあ? 「何を訳の判らないこと言ってるんだ?」 「呼ばれてる、気がする。」 「落ち着けって!トリステインに一足先に帰ってのんびりするんだろ相棒!」 うう、だめだ、この映像・・・これを消さねえと・・・ 「ちょっと、黙ってろ。」 オレは、・・・を信用しすぎていた。だから、・・・は死んだ。 本当に信用できるのは、やっぱり、オレ自身だよなあ。 セッコは、発進寸前のイーグル号から飛び降りた。 「なあ相棒、この船に乗らなかったら、どうやって帰るんだよ!」 デルフリンガーが叫んでいる。 「うぁ?あー。多分大丈夫だ。[不安]がなくなってから、考えるぜえ」 セッコは、デルフリンガーを抜き、壁に潜った。 「なにがだ・・・グボァ、ぁぃぼヴ!ぬぁんだこれ気持ちわりい!がぼぁ!」 「これが、オレだ。オレを相棒っつーなら慣れろ。あと、静かにしてろ。 振動が、音が聞こえねえと方向感覚が狂うんだよぉ。」 上に向かって、深く、潜っていく。上に、上に。 ルイズに対するワルドの剣幕を見かねたウェールズが、間に入ってとりなそうとした。 「子爵、きみは振られたのだ。潔く・・・」 が、ワルドはその手を跳ね除ける。 「黙っておれ!」 ウェールズは驚いて立ち尽くした。ワルドはルイズの手を強く握った。 「ルイズ!きみの才能が僕には必要なんだ!きみはそれに気づいてない!」 ルイズはワルドの手を振り解こうとしたが、ワルドの力は物凄く、解けない。 「冗談じゃないわ!さっきまでは、トリステインに戻って、ゆっくり話してから、そうして結婚しようと思ってた。 だけど、今確信したわ。やっぱりあなたはわたしを見ていない!」 暴れるルイズを見て、ウェールズが加勢し、ワルドを引き剥がそうとした。 しかし、ワルドはそれを突き飛ばす。 「うぬ、何たる無礼!何たる侮辱!子爵、今すぐにラ・ヴァリエール嬢から手を放したまえ!さもなくば、我が魔法の刃がきみを切り裂くぞ!」 ワルドは、それでやっと手を放し、そして張り付いたような笑みを浮かべた。 「こうまで僕が言ってもだめかい?ルイズ。僕のルイズ。」 「嫌よ、絶対に!」 「この旅で、きみの気持ちを掴むために、ずいぶん努力したんだが・・・」 「そう。わたしのあなたへの気持ちは、この旅で離れたのよ」 覚悟を決めたルイズは、そう吐き捨てた。 それを聞いたワルドは、両手を広げて首を振った。 「こうなっては仕方がない。ならば目的の一つは諦めよう」 「目的?」 ワルドの笑みが、禍々しく歪む。 「そうだ。このたびにおける僕の目的は三つあった。その二つが達成できただけでも、よしとしなければな」 「達成、二つ?どういうこと?」 なによ、まだ・・・まだ何かあったわけ? 「まず一つはきみだ。ルイズ。きみを手に入れることだ。しかし、これは果たせないようだ」 「当たり前じゃないの!」 ワルドが、ルイズを見つめなおす。 「二つ目の目的は、ルイズ、君のポケットに入っている、アンリエッタの手紙だ」 それを聞いたウェールズは、全てを察したのか杖を構えた。 しかし、ルイズは突然、笑い始めた。 「そう、残念ね。すっごく残念。それも、達成は不可能よ、ワルド!」 「「何?!」」 ウェールズも、ワルドもはっとした顔になる。 「手紙なら、セッコが、わたしの使い魔が処分したわ。 あの時は、さすがに慌てたし、怒ったわ。でも、今となっては勲章ものね」 「ガンダールヴか!なんと使えぬ奴!おのれ!」 「残念ね」 「・・・だが、三つ目は達成させてもらうぞ!」 閃光のように素早く杖を引き抜いたワルドが、呪文の詠唱を完成させ、ウェールズに飛び掛る。 「き、貴様!レコン・キスタ・・・」 正面から飛び掛ったワルドの攻撃を、何とか弾き返したウェールズの言葉は、しかし最後まで続かなかった。 「貴様の命だ、ウェールズ」 ウェールズの背後、始祖ブリミル像の影から、もう一人のワルドが飛び出し、その胸を貫いていた。 「・・・風の遍・・・在・・・ぐあ・・・」 ウェールズの口から、どっと鮮血が溢れ、床に崩れ落ちる。 「あなた、貴族派?・・・裏切り者、だったの?」 さすがにそこまでは読み切れなかったルイズが、わななきながら怒鳴った。 「そうとも。いかにも僕は、アルビオン貴族派、レコン・キスタの一員さ」 ルイズは杖を振り上げようとしたが、遍在のワルドに掴まれ、壁に押し付けられた。ワルドはそのまま言葉を続ける。 「我々はハルケギニアの将来を憂い、国境を越えて繋がっているのさ。そして、最終的には、始祖ブリミルの光臨せし[聖地]を取り戻す」 「昔は、昔はそんなふうじゃなかったわ。何があなたを変えたの?」 「話せば、長くなる。今ここで語る気にはならん」 逃げようとしても、壁に押し付けられていて動けない。 「どうして・・・」 「だから!だから共に世界を手に入れようと言ったではないか!」 「嫌よ、世界なんていらないって言ったでしょう・・・」 「もう、遅いんだよ。言うことを聞かぬ小鳥は、首を捻るしかない。さようなら、可愛い僕のルイズ」 ルイズの首に、手がかけられる。 「う・・ぐ・・・助けて・・・セ・・」 駄目、息が・・・ 「残念だよ・・・。この手で、きみの命を奪わねばならないとは・・・」 ワルドは、そう言いながらも実に楽しそうだ。それがとても、悔しい。 せめても本当に悲しそうにしてくれていれば、まだ救われたのに。 意識が朦朧としてきたせいか、壁に沈みこんでいるような感覚がある。 わたしは、こんな夢を・・・ その時、突然締め付けていた力が緩んで、ルイズは失神し床に崩れ落ちた。 ワルドの目が、驚愕に見開かれる。 壁から生えた腕に、“遍在”の胸が貫かれていた。 To be continued…… 戻る< 目次 続く
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「ハァ……ハァ……ハァ……」 ルイズは馬に乗って森を駆け抜ける。 「もう…どこいったのよ…」 彼女は巨体の使い魔を探す。 「そもそも、あいつモット伯の屋敷の場所知らないでしょうに……」 口に出してから、気づく。 「そうよ!あいつはモット伯の屋敷の場所を知らないのよ!飛び出していったはいいいけど、方角も距離も知らないはずだわ!なーにが 『我々の知力』よ!穴だらけのザルじゃない!一応あてがないから念のために屋敷に行って、そこに居なかったら帰るしかないわね」 そして、森が開け、モット伯の屋敷が見えてくる。 屋敷を囲む塀の向かいの茂みに一人の大男が潜んでいた。 彼の使い魔であった。 「ちょっとぉおおッ!なんであんたいるのよ!」 「モット伯とやらの家に向かうといったはずだ、脳みそがクソになったのか?」 ルイズは混乱する。 「あ、あんた異世界から来たんじゃなかったの?なんでモット伯の屋敷の場所がわかったのよ?」 ワムウは平然と答える。 「シエスタは『もうすぐ貴族の方の家に専属で勤める』『残り数日間はここで生活ができる』と言っていた。もうすぐと言っているんだから 行くのが5日以上はないだろうが、数日間という言い方からには少なくとも3日か4日はここに居るという印象を受ける。つまり馬車で1日ないし 数時間といったところだろう。こちらの馬の速度が俺の世界とほぼ同じだというのは数日前に俺の体で調べさせていたからな。まあ、俺の足で 1時間ちょっとしかかからない程近いとは思わなかったがな。方角はお前の部屋にある地図を見れば、王宮が北で南西はガリアという他国との国境、 東はゲルマニア国境だ。いくらなんでも勅使がこれ以上王宮から離れるということはあるまい。したがって北に向かって歩いていたら大きな屋敷に 『モット屋敷』などという悪趣味な看板があったんでな、小さな『赤石』を探すよりはわけがなかった」 ルイズは目が点になる。 「あんた、異世界から来た亜人だってのに地図の文字が読めるって言うの?」 「我々の能力をなめるな。文字や言葉など数時間ほどでほぼ完全に習得できる」 ルイズは呆然として、ため息をつく。 「あんたって、ほんと化け物ね……肉体面でも精神面でも…」 「ではその化け物から忠告だ。これから化け物じみたことをやるから貴様のような普通の人間は足手まといだ、帰ってくれ」 足手まといだと言われ、ルイズは激昂する。 「ヴァリエール家三女のメイジが普通の人間だっていうの!やっぱり私が魔法使えないからなの?爆発だけでも手助けくらいできるわよ!」 「違う。多少土人形やら火やら出せたところで同じだというのだ。俺は足手まといを抱えながら暗殺するほど器用ではない。 それに俺のプロテクターの定員は一人だ。ついて来られて侵入がバレては元も子もないし、バレずに済む方法は思いつかん。 それとも、お前がその方法を思いついたって言うのか?」 ルイズは唸る。 「じゃ、じゃあ私が正面で爆発を起こして陽動してる隙にあんたが裏口から入り込むとか…」 「論外だ。お前が勅使など殺したら死刑だと言ったんだ、誰かが殺したと思われては困る。それに、兵士の追撃をかわしきれるのか?」 ルイズは黙る。 「とにかくだ、帰って貰おうか。できれば物音を立てずにな」 ワムウは立ち上がり、姿を消した。 * * * ノックに主人は気づき、返事をする 「誰だね?」 一人の兵士が入る。 「衛兵のフウガです。あの、前門を23時まで見張るはずの同僚のライガが見当たらないのですが、行き先をご存知でしょうか?」 彼は後ろ手で自分の入ってきた扉を閉めた。 「知らんな、まあ十中八九脱走だろう。そんなやつはごまんといる、一々騒ぐんじゃない」 「しかし、彼とはこちらで数年一緒に勤めており、そんな奴じゃないはずな…うがッ!」 モット伯は目を見開いた。 こんなことは禁制の薬、厳罰の器具、裏世界の禁術を数多見てきたが、彼はこんな自体をあらわせる言葉を知らなかったッ! 先ほどまで、平然と自分と話をしていたはずの一人の兵士の背中から首が生え、胴体が体の外に表れ、腕を出し、足を出していった。 何より恐ろしいのはッ!その男が全ての体を見せてきたときには!その兵士は跡形もなくなっていたのだ! その男には、手首がなかった。 モット伯はガタガタと奮えながらもその男に話した。 「お、お前は何者だ!先ほどの兵士はどこにいったんだ!」 「食べさせてもらった。人間に潜行するなんて、4000年ぶりだろうか」 彼は舌なめずりでもするかのように、周りを眺めながら淡々と述べた。 モット伯は腰を抜かし、後ろに倒れる。 「Wake me up!だ、だれかッむぐッ!」 モット伯ののどに手首が食らいつき、彼は大声をあげることはできなかった。 「切り落とした手首を持ってきていてよかったな、まさか役に立つとはな」 彼はその大男を憎憎しげに見つめる。 モット伯は杖を振った。 「何者だか知らんがトライアングルを舐めるなッ!」 腐ってもトライアングル、腰を抜かした状態でも詠唱を密かに終えていた。 杖先から大男に向かって水柱がワムウに向かって飛んでいく。 しかし、大男は片手でそれを受け止める。水しぶきが天井、床に広がる。 「う、うわぁああああッ!」 モット伯はまだ杖を振る。今度は高熱の蒸気を杖からあの大男に向かって飛ばす。 直撃はした。はずだった。が、大男はものともしない。 「あまり音と時間はかけたくない。とっとと死んでもらおうか」 モット伯はガタガタと奮えている 「あ、あんたは何者なんだ!誰に命令されたんだ!」 とのどに手首が食らいついた状態で出せるだけの声を出す。そして倒れたまま後ずさる。 大男はニヤリと笑って 「お前の命を狙っているものはいくらでもいるだろう」 モット伯は哀願する。 「せ、せめて、冥土の土産にどこの者か教えてくれ」 「だめだな」 すると、モット伯の顔色が変わった。 「教えてくれないのならば、少々痛めつけてさせてもらおうか」 大男の天井から水滴が滴り落ちる。 「『アクア・ネックレス』!」 * * * 風のプロテクターを纏い、見張りの一人を単独のときに殺し(その人間はかけらも残さず食った)、交代に来た人間に潜行する。 数人経由しなければならないか、と思っていたが一人はそのまま主人の部屋に向かってくれた。ありがたい。 主人のモット伯とやらはメイジのようだが、大したことはない。 腰を抜かしたまま叫ぶ。 「あ、あんたは何者なんだ!誰に命令されたんだ!」 「お前の命を狙っているものはいくらでもいるだろう」 直接のかかわりがないだろうルイズですら嫌っていたのだから、殺意のある奴はいくらでもいるだろう。 そいつらと勘違いしてくれれば対処がしやすい。 「せ、せめて、冥土の土産にどこの者か教えてくれ」 奴は哀願してきた。戦士としてもクズであると明言できる。こんな奴には神風嵐を使うまでもない。もっとも片方手首がないため使えないが。 「だめだな」 すると、奴の顔が変わる。 「教えてくれないのならば、少々痛めつけてさせてもらおうか」 天井から水滴が滴り落ちてきた。 「『アクア・ネックレス』!」 落ちてきた水滴は軌道を変え、俺の口の中に飛び込んでくる。 普通の人間ならば、とっさにかわそうとする!しかしワムウは思いっきり拳を奮った! 水滴が吹っ飛ぶ。 しかし、彼はそのあたりをまだ漂っていた『蒸気』にまでは気を払っていなかった。 蒸気はまるで先ほどの水滴のように進路を変え、ワムウの喉へ侵入した。 「NWWWWWWWWW!!」 その蒸気は俺の喉を切り裂いた。 モット伯は叫んだ。 「ビンゴォッ!喉を引きちぎった!」 大男の体はよろめく。 「フハハハハ!口ほどにもない奴め!俺の『水魔法』と『アクア・ネックレス』!これほど相性がいいものがあるだろうかッ!」 モット伯の家柄がいくらよかったと言っても、人望も実力もなければ出世はできない。 彼の人望は皆無ではあった。つまり、実力は折り紙つきであった。表面を取り繕う演技力とその実力だけは認められ、勅使にまで出世したのだ。 彼の『右腕』である能力もその出世を手伝っていたが、どんな汚れ仕事をも果たす胆力と経験こそは彼の『左腕』であった。 が、彼の経験をもってしても、 「MWWW…」 喉をもがれて、 「WRY…」 それでもなお戦いを挑んでくるような生物を知らなかった! 「WRYYYYYYYYYYYY!!!!」 起き上がった勢いによる蹴りがモット伯にヒットし、彼は壁に吹っ飛ぶ。 クリーンヒットとはいえ、苦し紛れの攻撃には違いないため、致命傷にはならない。 が、威力がないゆえにあまり音が立たなかったのは幸運であった。 呻き声をあげて吹っ飛んだモット伯は、着地地点で自分の状況を考える。 (ど、どういうことだ!?奴の喉は確かに切り裂いた…もぎとったはず!実際ここからでもそれが見える!なのに!なのにッ!なぜ奴は 生きているんだ!?俺に蹴りを食らわしてくるんだ?) ワムウは予想外の攻撃に少し立ち止まって考える。 (ふむ…魔法にはこういうものもあるのか、勉強になったがいかんせんパワーが足らなかったようだな) 「うおおおおおッ!『アクア・ネックレス』ッ!!」 ワムウがモット伯に向かって歩き出すと、彼の近くを漂っていた先ほどの蒸気が、実体化し彼の喉に突っ込んでくる。 が、その水蒸気はワムウには届かなかった。 ワムウの姿はゆがんで見えた。 「この『風のプロテクター』は…もっともこの名付け親は俺ではないがな……まあそんなことはどうでもよかろう…… 『風のプロテクター』は俺の肺からの水蒸気を俺の風で操って纏っている…水蒸気が水蒸気と風の壁をつっきることはできまい…」 モット伯はアクア・ネックレスを執拗に忍び込ませようとする。しかし、カッター型にしなければシャボン玉すら通さなかったであろう 風のプロテクターは、水蒸気などを弾くことはわけがなかった。 「ひ、ひぃいいいい!」 モット伯は後ろに後ずさるがもう窓しかない。 ここは屋敷の4階、生身の人間が落ちたら怪我は免れないだろう。 そして、怪我した状態でこの化け物から逃れることは不可能であると悟っていた。 そのために… 「『アクア・ネックレス』!」 彼はそれを自分の付近まで呼び寄せ、窓を開け、それをクッションのようにして飛び降りた。 そして、着地。 「なるほど、そういった使い方もできるのか」 ワムウは窓のさんに立ち、躊躇なく飛び降りる。こちらも問題なく着地。 「さあ、そろそろ諦めるんだな。なかなか楽しかったが、そろそろ終わらせないと困る」 「ふは…ふはははははは!」 モット伯は大きく笑い出した。 「お、俺も幸運に恵まれたようだぜェーーッ!」 モット伯の視線の先にいるのは、ルイズだった。 * * * 「な、なにがおこってるのよ!」 「その水滴を口に入れるなッ!」 モット伯はアクア・ネックレスをルイズの方向に向ける。 いくらワムウが柱の男だからと言って、あの距離ではアクア・ネックレスを止めるのは不可能であった。 「ふひゃはひゃッ!無駄だッ!口以外にも入れるところなんてどこにだってあるぜェーッ!こんな時間に通りすがりの娘がいるわけがない、 そう思っていたがやはり貴様の関係者かッ!お前らは将棋やチェスでいう『詰み』に嵌ったのだーッ!」 モット伯は未だに手首で半分締められている喉を使い叫ぶ。 「よくわかんないけど、こいつから離れればいいのね!ワムウはそいつをやっちゃいなさい!」 ルイズは杖を抜く。 ワムウは一瞥したあと、モット伯に向き直る。 「ただの魔法でどうしようっていうんだ!俺のはただの魔法じゃないんだぜェーッ!」 モット伯は狂ったように叫びつづける。 ルイズは地面に杖を振った。 地面は軽い爆発を起こし、ルイズは後方に吹っ飛ぶ。 「距離は稼いだわよ。これでいいの?」 「ああ、十分だ」 ルイズには、なぜか、ワムウの考えがわかっていた。 「なにが十分だって?その程度の距離でェーーッ!お前だって俺に届く距離じゃ…」 モット伯の心臓が血を吹いた。 「単発式『渾楔颯』」 『烈風のメス』は軽々とモット伯の心臓を貫き、アクア・ネックレスはルイズの手前で墜落した。 ワムウは倒れているモット伯に近づく。 「ふむ…まだ息があるか……」 モット伯は持ち前の水魔法を使って治していたが、それでも意識を保つのが限界、死ぬのは時間の問題であった。 「とどめをささねばならない…だがただ食ってしまうのも惜しい…」 ワムウはつぶやく。 「この俺に単発とはいえ『渾楔颯』まで使わせた貴様には敬意をもってとどめをさしてやろう…手首がないから亜流になるがな…」 左足を関節ごと右回転… 右足を膝の関節ごと左回転… そのふたつの足の間に生じる真空状態の圧倒的破壊空間は! まさに歯車的砂嵐の小宇宙!! 「闘技『神砂嵐』!!」 * * * 「…いくら無茶だからって、足手まといっていわれたのに残ってそれで人質になった、なんてことになるくらいなら死んだ方がマシよ」 「あいつの注意がお前に行ったから助かったといえば助かった。まあ、礼くらいは言ってやろう。」 ワムウは馬の横を同じスピードで走りながら話していた。 「…怒らないの?」 「無茶をやったが、結果的に良かった以上は俺からはなにも言えん。だが、あんな上手くいくことは滅多にない。十回に九回は死んでいても おかしくない。あんな無茶をやりつづけるつもりなら、もう少し精進するんだな」 ルイズは下を向いて少し黙ったのち、話題を変える。 「ねえワムウ、なんでモット伯なんかに敬意を払う、なんて言ったのよ。戦いの上でも人質をとったり、能力を隠して奇襲したり、 あんたの言う『戦士』とはほど遠いような戦い方をしてたように思えるんだけど?」 ワムウは振り返りもせず答える。だが、その話には重みがあった。 「戦士とは戦いを侮辱しないもの、と考えている。今回の戦いにはルールなどなかった以上、卑怯呼ばわりする必要はあるまい。 むしろこちらから押しかけていって殺したんだ、どちらかといえば非はこちらにあるな」 「……あんた、わかってるならなんでこんな無茶やるのよ、まったく」 ふー、とルイズはため息をつく。 ルイズが生きてきた中でこんな生死の間をさ迷ったのは初めてだったゆえに、精神的に大分疲れているようだ。 「だが、戦いを侮辱しなかったといったことだけではなく、奴は単純に強かった。この俺にここまでダメージを与えられる奴は今までにもそうは居なかった。 波紋使いでもないのにここまでやられたのは長いこと生きてきたが始めてかもしれんな。その強さに『敬意』を払った。それだけだ」 ルイズは息をすいこむ。 「あんたのいう、『敬意』とかよくわからないけれど……あんたにとって『戦士』は全てだってのは本当のようね…… ゲスだから殺そうと思った相手に敬意を払うとかわけわかんないわよ、まったく」 そして、振り返る。 「そうそうワムウ!寮に戻ったらあの姿を消した『ぷろてくたー』とかについてちゃんと説明するのよ!」 X月Y日付 ゲルマニア新聞――モット伯行方不明事件 屋敷の敷地には小さな穴が空いており、争った形跡があったため、モット伯自身の失踪は考えにくく、殺人、あるいは誘拐と当局は考えていたが モット伯自身の魔法と思われる水魔法以外の魔法が使われた形跡がなく、メイジ殺しの犯行と考えられて捜査を進めていたが、 凶器と行方不明になったモット伯及び2名の死体すら見つからず、当局は昨日、捜査の打ち切りを決めたと発表した。 新しい勅使に就任したアンドリュー・リッジリー氏の会見では…… To Be Continued...
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第1章 前編 「あんた誰?」 値踏みするように、自分を覗き込む少女が問いかける。 …君こそ誰だ? ここはどこだ? 体を起こし、質問に質問で返そうとしたが……身体が応答しない。 目を開き、首を少し動かして、視野を確保するのが精一杯であった。 (身体が…重い…… 今敵に襲われたら… 楽に…逝けるな……) 何よりも男落胆させたのは、大切な相棒…”友”が自分の隣にいないことであった。 何の返答も無い。 (もしかして私… ”死体”を召喚しちゃった!? …でも、目は開いてるし…首もすこし動いてる? …ケガでもしてるのかしら?…) 少女は自分が召喚した生き物の安否を確かめるため、”それ”のそばに近寄り、まじまじと観察してみた。 どうやら初見通り、人間の男性らしい。 「黒地に、細い白い縞模様(ピンストライプ)」の変な服を着ている。肩には、鎧の肩当ようなモノを着けている。 (傭兵か兵士? まぁ、貴族ではなさそうね…) 呼吸に合わせ、身体が上下している。 (良かった… 生きてる… …ケガらしいケガも見当たらない…) (”死体”なんか召喚した日には、「”使い魔のライフポイントがゼロ”のルイズ」って呼ばれかねないもんね…) 自嘲気味に、安堵の気持ちを心の中で呟いた後、今度は首から上を改めて見てみる。 髪をいくつかに束ねて、植物の房のような髪型。額には、黒いバンダナを巻いている。顔立ちはなかなかの男前…だと思う。 男は一生懸命、目をぐるぐると動かしている。意識はあるようだ。 (…平民が使い魔だなんて気に入らないけど… 出てきたものはしょうがないわ・・・) 少女は人生で(まだ十数年ではあるが、それでも)トップ3に入るほどの譲歩と妥協をしてのけた。 (…やっぱり何事も最初が肝心よね? 御主人様としての威厳を見せ付けないと…!!) (ここはどこだ?) 自由の利く目を最大限使い、少しではあるが首も動かし、辺りを確認してみる。 …どうやらヴェネツィアの広場ではないらしい。なにやら少女以外にも、沢山の人の気配がする。 (…確かにオレは…・・・ヴェネツィアで死んだはず……だよな) 何故ティッツァが隣にいないのか。何故生きているのか。何故ヴェネツィアから移動しているのか。何故…。 疑問はたくさん有るが、それよりも、今現在何をするべきかを考えなくては……。 先ほど自分に声をかけてきた少女が、近くに寄ってきていた。 ……オレを観察してるらしい。 (まさか、コイツが”新手のスタンド使い”ってことは……) 最初に目に飛び込んできたのは、桃色がかったブロンドの、綺麗な長い髪である。 大地に仰向け状態のまま、動けぬ自分から見上げると、背景の青空のせいで、より桃色が映えて見えた。 顔だって整っている。美人というか、美少女というか。とりあえず、十分”有り”である。……色気は感じられないが。 (あと何年かすりゃもっと”化ける”な……って、そんな場合じゃねーな) 微妙に緊張感が無くなっている。いや、集中力と思考力が下がってきている。 (このまま目をつむったら楽になりそうだ……) 緩やかに、穏やかに”生”を終えるときは、こんなカンジなのだろうか……。 男の顔前に可愛い小さな顔が移動してきた。 「…もう一度聞くわ。 あなた誰? 名前は?」 落ちついた調子で、問いかける。 (…多分……スタンド使いとは違うな……答えても問題なさそうだ・・・) 少女の考えた”余裕のある威厳”を感じたからか、男が沈黙を破った。 「………スクアーロ…」 消え入りそうな声。スクアーロの全身全霊を込めた主張であった。 「そう、”すくあーろ”ね? どこの平m「ルイズ、『サモン・サーヴァント』で平民呼び出してどうするの?」 誰かが、少女の威厳ある対応を横から完全にぶったぎる。それを受け、少女以外の人間が笑う。 「ちょ、ちょっと間違えただけよ!」 少女は怒鳴るが、周りの人間は気にしていない。それどころが、さらに追い討ちをかける。 「間違いって、ルイズはいっつもそうじゃん」 「ルイズの失敗率は世界一ィィィッ!!」 「さすがはゼロのルイズだ!」 誰かがそう言うと、人垣がどっと爆笑した。 少女の名前はルイズというらしい。 (やっぱり平民の使い魔なんて嫌!) …ルイズは先ほどの譲歩と妥協をあっさり撤回した。 「ミスタ・コルベール!」 ルイズはスクアーロに背を向け、怒鳴った。 すると、中年の男が前にでてきた。……生え際は完全に後ろへ下がっていた。むしろ無い? ルイズはミスタ・コルベールに怒鳴りながら、コルベールはミス・ヴァリエールを諭しながら、会話をしている。 「もう一度……!!」 「それは……」 …なにやら、召喚だの儀式だの、果ては使い魔なんて単語が出てきた。 「でも平民を使い魔にするなんて聞いたことがありません!」 ルイズがそう言うと、再び周りがどっと笑う。ルイズは人垣を睨みつけるが、笑いは収まらない。 「…たとえ彼が平民でも、君の使い魔になってもらわなくてはな」 「そんな……」 ルイズはがっくりと肩を落とした。 「さあ、儀式の続きを…」 「えー、彼と?」 ルイズとコルベールは、まだ話し合っていたが、ルイズの勢いは完全になくなっていた。 (……平民てオレのことか? …使い魔になる?オレが?) 聞こえてくる会話と自分の状況を何とかすり合わせ、導き出した答えは納得できないものであった。 というか、理解できない代物であった。 (そもそも使い魔ってなんだ? 契約?書類でも書くのか?) スクアーロが、脳内で謎と疑問軍団と戦っていたとき、ルイズがスクアーロの方に向き直った。 「ねえ… あんた…聞こえてる?」 「……何とかな」 そう。と一言いうと、ルイズはスクアーロの左手真横に、立て膝の状態で構える。 「あんた、感謝しなさいよね。貴族にこんなことされるなんて、普通は一生ないんだから」 貴族?またとんでもない単語が出てきたな…。 ルイズは諦めたように目をつむる。 手に持った、小さな杖をスクアーロの目の前で振った。 「我が名はルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール。五つの力を司るペンタゴン。この者に祝福を与え、我の使い魔となせ」 朗々と、呪文らしき言葉を唱え始めた。 すっと、杖をスクアーロの額に置いた。 そして、横たわったままのスクアーロの唇を奪う。 ズキュウーーーz___ン それはまるで、王子様が眠れるお姫様へのキスするかのように。…配役は逆だが…。 「終わりました」 スクアーロから唇を離し、ミスタ・コルベールに告げる。 ルイズは顔を真っ赤にしている。どうやら照れているらしい。 …まさか初めてのキスじゃねぇよな? スクアーロの予想は的中していたが、それを確認するほど野暮ではなかったし……。 「誰にでも、初めてはある」ということだ。 「『サモン・サーヴァント』は何回も失敗したが、『コントラクト・サーヴァント』はきちんとできたね」 コルベールが嬉しそうに言った。 「相手がただの平民だから、『契約』できたんだよ」 「そいつが高位の幻獣だったら、『契約』なんかできないって」 すかさず野次が飛び、ルイズがそれに噛み付くように反撃してゆく。 …よくやる……。 ルイズと巻き毛の子をコルベールが宥めていた。そのとき、スクアーロの体が妙に熱くなった。 「うぐァァ! ぐうううう!」 仰向けの体勢から、体を丸め、何とかこらえようとする。だが……。 熱い!これはまるでッ!……そうッ!あの時のッ!ナランチャにッ!エアロスミスで撃ち込まれた時と同じッ!全身に機銃をブチ込まれた感覚と同じだッ!! スクアーロが何かをこらえている様子を見て、語りかける。 「すぐ終わるわよ。『使い魔のルーン』が刻まれているだけよ」 余りにも事も無げに告げるルイズを睨みつける。 「あのね」 「なんだッ!」 「さっきからあんた……。平民が貴族にそんな口利いていいと思ってんの?」 うるせぇ!と怒鳴りつけてやろうとした瞬間、熱さが消え、体は平静を取り戻した。 「ふぅ……。」 熱さが引くと、今まで言うことを聴かなかった身体が素直になった。むしろ絶好調といっても良い。 最高に「ハイ!」ってやつかアアアア? コルベールが近寄り、スクアーロの左手を確かめる。 「珍しいルーンだな。…なかなか興味深い」 そんなに興味深いなら、テメーのその光るデコに、オレがじっくり刻んでやろうか!? さっきまでの諦観的・悲観的な気持ちから一転、強気なセリフを思いつくほど”息を吹き返した”。 「…それでは皆、教室に戻りましょう」 少しだけ名残惜しそうにしながら、スクアーロの左手から視線を外し、二・三歩歩くと宙に浮いた。 飛んだ…のか……? …ッ! スタンドかッ! さっと身構える。しかし……。 (水がッ…!? 水がねぇッ!) 慌てて周りを見渡すが、水溜りすらない。さらに他の生徒と思わしき連中も一斉に宙に浮く。 (全員スタンド使いかッ!? いや、いくら何でもそれはありえねぇッ!?) 「ルイズ、お前は歩いてこいよ!」 「あいつ『フライ』どころか『レビテーション』さえもともにできないんだぜ」 「その平民、あんたの使い魔にお似合いよ!」 口々にそう言って笑いながら飛び去っていく。 自分への攻撃でなく、純粋に移動手段であることに安心するとともに、思いもしない光景にかなりの衝撃を受けた。 警戒を解き、飛んでゆく人間?を見送ることしかできなかった 二人きりになって、ルイズは大きなため息をつきながら、大声で怒鳴った。 「あんた、何なのよ!」 それからはただただ一方的にルイズがまくし立てた。 なんで、私の使い魔が平民なの?グリフォンとかドラゴンがよかったのに!どっからきたの?何その格好?その変な髪型は意味有るの? …質問というか、今までの鬱憤を晴らすかのごとく、身振り手振りで「疑問と要望」をぶつけてくる。 そんなルイズに何の反応もしないスクアーロ。何か考え事でもしているようだ。 返答しない使い魔のそっけない態度に、さらに燃えつきるほどヒート!!…アップしようとするルイズ。 そんな御主人様を、使い魔はいきなり抱きしめた。 「ちょ、ちょっと1? な、なにするd 「色々言いたいことはあると思うが、オレたちが最初にすべき事は…」 「互いの理解を深めること。 それには”コレ”が一番早い……」 スクアーロは目を閉じ、ルイズにキスをしようとしたが……。 次の瞬間、スクアーロの大事な部分は無言で蹴り上げられた。 薄れ行く意識の中で、スクアーロは友に「反省と考察?」を述べた。 …やっぱり慣れないことはするもんじゃないな……。 ティッツァーノ… ここがどこだかわからねぇが……。 かなりヤバイところってことと……。 ここの女の子は可愛いが…気が強くて…攻撃的ってことは確実だぜ……! うずくまり、微笑を浮かべながら気を失う使い魔と、赤面しつつ、怒りに体を震わせながら使い魔を見下ろす御主人様。 …なんとも空の『青』に『赤い顔と桃色の髪』が映え、大地の『緑』に『黒い服』が良く馴染んでいた……・ 第1章 オレは使い魔 前編終了 To Be Continued......
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生きること、そして死ぬこととはなんだろうか。 死とは生命活動が不可逆的に止まる事だ。だがそれ肉体的な死でしかない。 肉体的に死んだとしても精神、もしくは魂がそこに残る。それが幽霊だ。幽霊にはちゃんとした意識がある。 何故わかるかって言うと自分が幽霊だったからだ。つまり実体験ってやつだ。 死んだ後でもはっきりとした自意識を持つのにそれを死んでいるというのだろうか? 植物状態の人間は意識が無いのに生きているというのだろうか? 精神的な死とは何だろう?あの世に行くことだろうか?しかし幽霊だったときでさえついぞあの世があるなんて確認できなかった。 それに人間全員が全員死んだからといって幽霊になるわけでもない。彼らの魂はどうなったんだ?死んだのか?ならどうして精神的に死んだんだ? 『生と死の法則』はどんなのなんだ?それがわかれば私は……私はどうするんだ? パートⅢ 使い魔は手に入れたい これは夢だ。すぐにそう判断することが出来る。何故なら私はまたあの白い空間にいるのだから。 さすがに三回も来ればこれが夢だとわかる。しかし私が起きた時この夢を覚えていないのは確実だ。2回とも覚えていなかったからな。 今回もどうせ覚えていないだろう。 そう思いサビの聞こえない歌を聴きながらぼやけた人影に近づいていく。そしてその人影の反対側からも誰かが近づいてくるのがわかる。 そして私たち、二人の『吉良吉影』は再び対峙した。 「また会ったな」 『吉良吉影』に話しかけてみるがなにも返事は返さない。 「突然わかったんだがこの人影って『キラークイーン』っていうらしいぞ。自分でもどうしてわかったのかわからないけどな」 やはりなにも返してこない。 「この曲も『キラークイーン』っていうらしい。やっぱりどうしてわかったか知らないけどな」 しかし彼が何も返さなくても喋りかける。特に意味は無い。暇なだけだ。 どうしてここに『吉良吉影』がいるかわからない。自分が作り出した幻かもしれないしもしかしたら生前の私なのかもしれない。 でも今生きているのはこの私なのだ。私のはずなのだ。生前の私だとしてもでしゃばらないで欲しい。 「銃を持っていたのはお前だったんだな」 黙っていた『吉良』が突然喋り始める。 「銃?」 「『キラークイーン』の右腕のことだ。お前がサビだけが聞こえないという時点で気づくべきだった」 何を言ってるんだ? 「サビは簡単にあらわせば弾丸だ。しかしサビにいくためにはそこにつながる歌が無いといけない。つまりサビ以外が銃なんだよ。弾丸は銃がなきゃただちっぽけな鉄だからな……」 そう言うと突然私に向かって勢いよく手を伸ばしてくる。しかしそれは見えない壁によって遮られる。彼の表情は怒りで満たされていた。 「その銃は、『キラークイーン』は私のものだぞ!私のスタンドなんだぞ!どうして貴様なんかが持っている!答えろ!」 その姿を見ながら思う。この『吉良吉影』は本当に私の死ぬ前の人間なんだろうと。 だからこそ答える。諦めさせるために、邪魔な存在を消し去るために。 「私が『吉良吉影』だからだよ」 「な……に……?」 『吉良』の表情が驚きに染まる。 それを見ながら私は帽子を目深に下げた。 体がだるい。まるで全身に鉛でも付けているようだ。目を開ける気も起きない。 このままもう少し寝てしまおうか。しかしどうして寝ているんだろうか?ふむ、寝た覚えが無いな。 そうだ。そういえばアルビオンでワルドと戦ったんだ。そして……その後どうなったんだ?デルフ、デルフに聞けばわかるはずだ。 目を開けろ、体を起こせ。 その思いだけを胸に目を開け起き上がる。 目がぼんやりする。頭を振りかぶり目をこする。そしてあたりを見回す。 ここは何処だ? 「ヨシカゲ!」 「うおっ!?」 横から大声で突然叫ばれさらに体に衝撃が走る。 起きていきなりこんなことがあったら誰だって驚くに決まってる。横を向くと誰かが抱きついていた。 桃色がかった髪にさっきの声、ルイズか。 「よかった起きて。……このまま目が覚めなかったら……グスッ!わたし自分が許せなかった……」 「は?」 これは誰だ!? 「本当に……グスッ!生きててよかった!」 え?何この状況?
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RPG 117 名前: 名無しさん@1周年 投稿日: 2000/07/16(日) 02 29 AMELってもう紹介されてる? http //homepage1.nifty.com/sakurayama/ 275 名前: 備中守 投稿日: 2000/08/22(火) 09 59 よそのスレで既出だが「AMEL BROAT」ってどうか。 「さくらやまスクエア」に置いてある。 276 名前: 名無しさん@1周年 投稿日: 2000/08/23(水) 00 57 http //mentai.2ch.net/test/read.cgi?bbs=game key=966215299の5です。 途中で止めた私ですが評判良さそうなのでもう一度やってみようと思います。 421 名前: 名無しの野望さん 投稿日: 2000/10/11(水) 02 16 ここのRPGの「AMEL BROAT」ってどーよ。 絵がヘボいのがナンだが。 http //homepage1.nifty.com/sakurayama/ 120 名前: 80 投稿日: 2001/02/26(月) 18 52 AMEL BROAT(既出) http //www.vector.co.jp/soft/win95/game/se073871.html ヲレ的には、これを入れて「四天王」としたいところで、 何が凄いかって、プログラムで作っているということ。 一部では「グラフィックがしょぼい」とか、「たるい」とか、 いろいろと聞くけど、技術的にもシナリオ的にも凄いので、 おすすめ。 317 :287 :01/10/04 19 49 ID SjzU4wKA アメルブロートの作者の新作、RPGだけど、これおもしろいよ。オススメ。 61 :名無しさんの野望 :02/11/05 21 56 ID NbnbqnF2 無駄に見えるアイテムはトレードイベントを逃さないよう 手元に残すのが自分的に常識だったり。 売るのはいつでもできるし、そういう遊び心のあるゲームに 決定的に金が足りなくなるほど厳しいものはほとんど無いからな。 ただAMELのたけざおにはやられますた・・・まさか初期装備で来るとは(つД`) 63 :名無しさんの野望 :02/11/05 22 14 ID xIRgTMNp 61 たけざおは救済措置として雑魚キャラが低確率で落としたような。 363 :名無しさんの野望 :03/01/08 17 42 ID ZM1xV1X4 難易度が高めでアイテム収集の楽しみがあるRPGってないですか? できればツクール以外で 欲を言うとストーリーもある程度あったほうがいいです・・・ クルクートとか好きでした 379 :名無しさんの野望 :03/01/08 19 10 ID 12FHtH5M 376 AMEL BROATぐらいかな。ツクール以外でまともにたのしめそうなのって言ったら。 380 :名無しさんの野望 :03/01/08 19 11 ID QIvjt9df 379 AMELは絵見ただけで拒否反応起こす人がいるから万人受けするとは言い難いんだよな。面白いけど。 777 名前:名無しさんの野望 投稿日:2003/02/08(土) 01 59 ID dyXDDG7b スタダスがだめな俺におすすめRPGをチョイス頼む、ソムリエさん 780 名前:名無しさんの野望 投稿日:2003/02/08(土) 02 27 ID 7xOH3ilx 777 AMEL そういえばやったこと無いな・・・、グラフィックがなんとなくやる気を削がせるが 評判がいい。 336 名前:名無しさんの野望 投稿日:2003/10/01(水) 19 10 ID UMG/hssZ AMEL BROATをやっているんですが、岬の遺跡?で無限ループが解除できません。 何回試してもうまくいかないよ…誰かボスケテ 361 名前:名無しさんの野望 投稿日:2003/10/01(水) 20 14 ID ykjPyq7E AMEL BROATをプレイしたことがある方、 336に答えてくれませんか 362 名前:名無しさんの野望 投稿日:2003/10/01(水) 20 15 ID RBCY1CoS 大分古いから、もう忘れた。 363 名前:名無しさんの野望 投稿日:2003/10/01(水) 20 29 ID KPB12bcY 362 やったことはあるが、細かいことは覚えていない。 詰まるようなところは、特に無かったと思うが。 作者のページにはAMEL関係のものはほとんど残っていないようだが、 「AMEL BROAT 攻略」あたりでぐぐってみたら、ファンの作った攻略ページが いくつかあるようだ。そのへん見れば。 392 名前:336 投稿日:2003/10/02(木) 04 34 ID KTFE5xuV ぐぐって攻略ページを見つけました。 363さん他のレスしてくださった人たち、ありがとうございます。 479 名前:名無しさんの野望 投稿日:2003/10/03(金) 21 13 ID DX+Y1nnh むしろアメルとクレスを差し替えろ。 アメルのが漏れには数十倍楽しめたぞ 694 名前:名無しさんの野望 投稿日:2004/07/21(水) 00 06 ID U4Lb/nrJ 今更ながらAMEL BROAT 面白かったよ。 グラフィックがしょぼいのはやむを得ないとして、非ツクールで あれだけ中身の濃いのは初めてかも。 今度は同じ作者のクレスタージュもやってみようかと。 105 名前:名無しさんの野望 投稿日:2004/08/09(月) 15 11 ID +WL/QqqF アメルブロートを暇つぶしにやっている今日此の頃。 質問なんですが、わらしべイベントってどんなのなんですか? 107 名前:名無しさんの野望 投稿日:2004/08/09(月) 15 34 ID XR+vV8y3 105 物々交換のこと。 くだらない役に立たなそうなアイテムを捨てたり売ったりせずに持っていれば 交換してくれーってイベントがいろいろなところで発生する。 AMELは攻略サイトもあるから自分で探してみれ 108 名前:名無しさんの野望 投稿日:2004/08/09(月) 15 35 ID +WL/QqqF 107 いろんなところで・・・ですか?一箇所かと思っていました。 132 名前:名無しさんの野望 投稿日:2004/08/09(月) 18 53 ID eK0N8YEq 108 竹槍を交換するのとイベントアイテムを次々交換するのと2種類あったような。 148 名前:名無しさんの野望 投稿日:2004/09/05(日) 19 40 ID c2ioMwwv 夏の間にやったRPG。面白かったよ。ともに NEC - PC98時代のゲーム。 ドラクエというよりFFかな?ここまで絵がヘタレだと逆にゆるせてしまう。 内容のほうは良いよ。ストレスなく遊べます。 Amel Broat ttp //homepage1.nifty.com/sakurayama/download/download.html 52 名前:名無しさんの野望 投稿日:2004/12/04(土) 14 59 ID 0U+n58T4 どなたかAMELBLOATのMIDIおいてある場所知りませんか?あるいは、吸出しツールかなんか・・・ 63 名前:名無しさんの野望 投稿日:2004/12/04(土) 15 53 ID LIRQZwqS 52 AMELってすごい懐かしいの持ち出すね、おまいさん。 AMELのmidiは確か本家サイトで落とせたぞ。 ttp //homepage1.nifty.com/sakurayama/ ここね。 64 名前:63 投稿日:2004/12/04(土) 15 56 ID LIRQZwqS ああ、すまん。 今行ってみたらなかった。 79 名前:名無しさんの野望 投稿日:2004/12/04(土) 18 05 ID 7a2qEz9Y 63 AMEL ジュークボックスつかえばいいさ… クリアしてないとだめだけど… 彼女俺にまたがりっぱなしで、朝まで休ませてもらえんかったww http //younube.net/calnova/52901 -- (ボンちゃん) 2009-05-30 12 23 50 気持ちよすぎてマジ天国みたいだったよwwwhttp //frskfrsk%2ecom/mentosss/11019141 -- (デロリ庵) 2009-06-01 05 41 33 名前 コメント すべてのコメントを見る
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ここは・・・?学院のわたしの部屋。 「忠誠には、報いるところがなければなりません。」 部屋の中央で姫さまがプロシュートに左手を差し出していた。 姫さま?なんで? 「お手を許す・・・そんな事は出来ないさ!ただし、お前がだ・・・ 『アンリエッタ』」 プロシュートは、そう言い終わると姫さまの左手を両手で握り締めた。 「グレイトフル・デッド!」 「きゃああああぁ」 「きゃああああぁ」 わたしはベッドから勢いよく身を起こした。 学院の寮じゃない、宿の部屋だ。 夢か・・・、姫さまが・・・姫さまが。 落ち着け、落ち着けルイズ。プロシュートは姫さまにキスしたじゃない。 あんな事してないわ。 わたしは部屋を見渡すとワルドはもう居なかった。 テーブルの上に一枚の手紙が置いてあった。 『錬兵場で待つ ワルド』 何かしら、わたしは身支度を素早く済ませると錬兵場に向かった。 わたしが錬兵場に着くとワルドとプロシュートが立っていた。 「ワルド、来いって言うから来てみれば、何をする気なの?」 「彼の実力を試したくなってね」 魔法衛士隊の隊長とプロシュートが戦う・・・ただで済むはずが無い! 「もう、そんなバカな事はやめて。今は、そんな事してる時じゃないでしょう?」 「そうだね。でも、貴族というヤツは厄介でね。強いか弱いか、 それが気になるともう、どうにもなららくなるのさ」 そんなこと、気にしなくて良いじゃない。わたしはプロシュートに話し掛けた。 「やめなさい。これは、命令よ」 「ああ、そうだな」 プロシュートは立ち去ろうと背を向けた。 「今、なんといった?」 ワルドがギロリと睨むとプロシュートがチラリと顔だけ振り返り答えた。 「断ると言ったんだ」 プロシュートは、わたし達を残し一人で去っていった。 「臆したか、あの男は?」 ワルドは呟くが、それはないわね。 まったく、敵の襲撃より仲間同士のいざこざの方が気になるなんて、 思ってもみなかったわ。 その夜、一階の酒場でギーシュたちは酒を飲んで騒ぎまくっている。 その場にプロシュートは居なかった。部屋に残ってるのかしら? 部屋を訪ねるとプロシュートはベランダで月を眺めていた。 「プロシュート」 わたしが声を掛けるとプロシュートが振り向いた。 「なんだ?」 「よく断ったわね、てっきり受けるとばかり思っていたわ」 わたしは、思い切って言ってみた。 「お前がヤメロッつったんだろーが」 「それはそうなんだけど」 プロシュートが手合わせを断るなんて思わなかった。 「まっ、命を懸けずに戦うなんて無意味だからな」 「無意味なの?」 プロシュートの戦いに対する考え方に思わず聞き返した。 「ああ、そうだ。本当の強さってのは、追い詰められ命を懸けた時に 初めて発揮されるもんだぜ」 本当の強さか・・・。 「うお!」 プロシュートが叫んだ。視線を追うと岩でできた巨大な ゴーレムが立っていた。 巨大ゴーレムの肩に誰かが立っている。その人物は長い髪を、風に たなびかせていた。 「フーケ!」 わたしたちは同時に怒鳴った。 「プ、プロシュート!ど、どうしてココに?」 フーケが震えながら叫んだ。 「そりゃこっちの台詞だぜフーケ。 オメー、ムショにぶち込まれてたんじゃねえのか?」 プロシュートはフーケを鋭く睨んだ。 「はい。そ、それはですね、こちらの方が革命に一人でもメイジがいると 仰いまして、わたしが今ココにいるわけです。はい」 フーケが体を横にずらすと暗くてよく見えなかったが白い仮面をつけた 黒マントのメイジが立っていた。 プロシュートが質問を続ける。 「俺達を襲ってきた傭兵は貴族に雇われたと言っていたな、その貴族は お前だったのか?」 「え?えっ?あっ!」 あのトライアングルのフーケが小動物の様に怯えている。 「つまり、お前は敵っつーワケだな」 「違います!」 フーケは力の限り叫んだ。 「違います、違います、何も知らなかったんですぅ」 ここから見ても分かるほどの見事なうろたえっぷりだ。 「・・・・・・・」 仮面の男がフーケに話し掛けるが何を言っているのか聞こえなかった。 フーケが男に言い返す。 「裏切る?革命にも参加しよう、エルフにも喧嘩を売ってやるさ。」 エルフですって!?貴族派は何をしようっていうの? 「だけど・・・だけど、その男だけは別なのよー」 「・・・・・・」 「何も無いわ!私は絶対にあの男には勝てない!」 プロシュートと二度と戦いたくない。その気持ち、嫌というほど良く分かるわ。 二人の揉め事を見ながら、プロシュートが話しかけてきた。 「ルイズ、ヤツ等から話を聞くか?傭兵より詳しく話を聞けそうだ」 その瞬間、フーケが言い争いをピタリと止め此方に叫んだ。 「知りません!何にも知らないんです!本当なんです!私が知っている事は、 今ここの一階を雇った傭兵で襲うことだけなんです!」 何ですって、みんなが危ない。 「プロシュート、下に行くわよ」 「ああ」 わたし達は部屋を出て、階段を駆け下りた。 宿の一階は修羅場だった。ギーシュ、キュルケ、タバサにワルドが 魔法で応戦しているが、数の差で傭兵が圧倒している。 「状況は?」 プロシュートは近くにいたタバサに尋ねる。 「外、傭兵たくさん」 タバサが簡潔に答える、その後をキュルケが引き継ぐ。 「奴等は魔法の射程外から矢を射かけてきているわ。こちらに魔法を 使わせて精神力が切れたところを見計らい、一斉に突撃してくるわよ。 そしたらどうするの?」 プロシュートの後ろに薄っすらとした人型が・・・グレイトフル・デッド! 「なるほど『射程距離』か、オレなら余裕だな」 「ダーリン?」「兄貴?」 「オレの能力を無差別に使い、ヤツ等を無力化した後、皆殺しにしてココを 突破する!」 男も女も赤ん坊でさえも老いる、身の毛がよだつ光景が思い出される。 うろたえるなルイズ、自分の使い魔に怯えるメイジなんていない。 「ちょっとまってダーリン。今、無差別って言った?」 抜け目の無いキュルケが気づいたようね。 「ああ」 「それって・・・ゴクリ・・・わたし達も、て事?」 「そうだ、すぐに済ます。我慢しろ」 「お願いダーリンそれだけは止めて!それだけは!」 キュルケは一瞬で想像したのだろう、フーケの様に老いる自分の姿を。 「放せ!纏わりつくな」 何時も余裕の態度を崩さないキュルケの取り乱しようをみると、 なんだか凄く気分が良いわ。わたしってちょっと嫌な奴かも・・・ いやいや、相手はあのツェルプトーだから良しとしよう。 「わたし達、わたし達でなんとかするからそれだけは」 「よし!それでいこう」 ワルドは低いが響く声で言った。 「いいか諸君。このような任務は、半数が目的地にたどり着ければ、 成功とされる」 タバサが本を閉じ、ワルドの方を向いた。自分とキュルケと、ギーシュを 杖で指して「囮」と呟いた。 それからタバサは、わたしとワルドとプロシュートを指して「桟橋へ」と呟いた。 「時間は?」ワルドがタバサに尋ねた。 「今すぐ」と、タバサは呟いた。 「聞いてのとおりだ。裏口に回るぞ」 言い終えるとワルドは裏口に向かった。 「え?え?ええ!」 「今からここで彼女たちが敵をひきつける。せいぜい派手に暴れて、 目だってもらう。その隙に、僕らは裏口から出て桟橋に向かう。以上だ」 「で、でも・・・」 わたしはキュルケたちを見た。キュルケが赤髪をかきあげ言った。 「ま、仕方ないかなって。あたしたち、あなたたちが何しにアルビオンに 行くのかすら知らないもんね」 ギーシュは薔薇の造花を確かめ始めた。 「うむむ、ここで死ぬのかな。どうなのかな。死んだら、姫殿下と モンモランシーには会えなくなってしまうな・・・」 タバサはプロシュートに向かって頷いた。 「行って」 「わかった、いくぞルイズ!」 「ちょ、待ってよ」 酒場から厨房に出て、わたしたちが通用口にたどり着くと、酒場の方から派手 な爆発音が聞こえてきた。その後もっと大きなフーケの怒鳴り声が聞こえてきた。 「誰がおばあちゃんだ!小娘が!泣かす!殺す!いわす!」
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前ページ次ページS.H.I.Tな使い魔 一行が町の入り口までやってきたのはそれから二時間後だった。 タバサは近くの岩場に腰を下ろし、本を読んでいた。先ほどの竜がまるでタバサに話しかけるようにして顔を寄せている。 「おまたせ、タバサ。」 キュルケが康一の馬から飛び降りた。 「遅れたけど紹介するわね。あたしの親友、タバサよ。」 本を読んだままのタバサの肩を抱き寄せた。 「こ、こんにちはー」 康一は馬から降りて声をかけてみたが、反応はない。 「無愛想な子ねー」 ルイズはあきれたように言った。 キュルケが康一にずっとくっついたまま離れなかったのでご機嫌ななめである。 「ちょっと無口なだけよ。それにルイズも無愛想さでは負けていないと思うわよ?」 キュルケが軽く受け流すと、ルイズがむっとして睨みつける。 空気が険悪になりそうだったので、ルイズが爆発する前に康一は話題を探した。 「え、えーっと、そういえばルイズは何を買うつもりだったの?」 「・・・あんたにいろいろ買ってあげなくちゃいけないじゃない。杖とか。」 「杖?」 メイジでもない自分に杖などいるのだろうか。 ルイズはコーイチの耳元に口を寄せた。 (あんたの『スタンド』。魔法だってことにしたら都合がいいでしょ?) 「ああ、そっかぁ!」 康一は納得した。 スタンドをおおっぴらに使えないおかげで、ギーシュとの決闘ではひどい目にあった康一である。 杖さえ持っていれば、『スタンド』も『東方式のちょっと変わった魔法』としてみて貰えるかもしれない。 「なに、どういうこと?ダーリンって魔法が使えるわけ?」 キュルケは理解できない様子である。タバサは黙ったまま何も言わない。 「(そっか。康一の『スタンド』のこと、知ってるのわたしだけなんだ。)」 秘密を共有しているようでなんだか嬉しい。 「(そうよ。キュルケが無駄に色気を振りまいたって、所詮は他人だわ。わたしはご主人様なんだもの!)」 自信を取り戻したルイズは、とたんに上機嫌になった。 「たいしたことじゃないわよ。ちょっとあんたにはいえないけど。」 なんて澄まして見せる余裕まである。 キュルケからすると、非常におもしろくない。 康一から聞き出そうとするも、言葉を濁されるから余計である。 ほら、さっさと行くわよ。背を向けるルイズに向かってつぶやいた。 「いいわ。いずれじっくり聞き出してあげるんだから!」 「へぇ!なんだかいろいろなものがおいてあるなぁ~!」 康一はきょろきょろと興味深そうに店の商品を覗き込んでいる。 露店に挟まれた通りは非常ににぎやかで、人でごった返している。 売っているものも、肉や野菜や服などといったよくみるものだけでなく、日本では到底見れないようなものも並んでいる。 ビン詰めの目玉なんかがあったりしたが、あんなの何に使うんだろう。 「ここはトリステインで一番の大通り、ブルドンネ街よ。」 ルイズは心持ち得意げに説明した。 「え?一番の大通り!?」 康一は驚いた。単に近くの街だと思っていたのだ。 「それにしては・・・ちょっと小さい気もするなぁ~」 意外と規模の小さい国なんだろうか。 「なにわけわかんないこと言ってんのよ。ほら『杖』の店はこっちよ!」 ルイズは康一の手を引いた。 「あ、ちょっと待って!あの路地の奥に、『剣』の絵が描かれた看板が見えるんだけど・・・」 康一は薄暗い路地を指差した。 「そうね。武器屋があるんでしょ。それがどうかしたの?」 「いやぁー!ちょっと感動っていうか・・・!」 ゲームでよくあるような武器屋の看板が実際にあるのだ。 うわぁ、やっぱりファンタジーな世界なんだなぁ!と康一はわくわくした。実際の武器屋ってどんな感じなんだろう。 「ちょっと見てくるね!」 康一が走り出すので、ルイズはあわてて追いかける。 「こらー!武器屋になんて行ってどうするのよー!」 「やっぱりダーリンも男の子なのねぇ。」 キュルケとタバサも後を追った。 「おーい、坊主。ここはおもちゃ屋じゃねぇぞ。」 武器屋の店主は、さきほど入ってきた小さな少年に声をかけた。 ちょうど客もおらず、暇だったから構わないのだが、あまりにも目をきらきらさせて店を見回しているので苦笑する。 「あ、ごめんなさい。ぼく、こういう店、初めてきたんですよねー!」 まぁ害もなさそうだから放っておくとしようか。金も持ってなさそうだし。 と、そこへ今度は貴族の小娘が入ってきた。 すかさず店主は腰を低くした。 「いらっしゃいませ貴族様!当店はまっとうな商売をしておりまさ!怪しいものなんてなにも・・・」 「別にこの店に用があるわけじゃないわ。」 もみ手をする店長に、ルイズは興味なさげに返した。 「ほら、コーイチ。行くわよ!」 ルイズが袖を引っ張るが、康一は「もうちょっとだけ!」と壁にかけられている武器にかじりついている。 「(へぇ、ひょっとしてこの坊主は貴族の従者かなにかか。ってことはカモがネギしょってきたのかもしれん。)」 店主はにっこりと笑った。 「なんならお似合いのを見繕いましょうか?」 康一は嬉しそうに振り向いたが、残念そうに首を横に振った。 「ごめんなさい。ぼくって、お金もってないんですよね。」 店主は貴族の小娘を見たが、買い与える気など毛頭なさそうである。 そこに今度は、まぶしいほどの色気がある赤毛の美女と、青髪の娘が入ってきた。こちらも貴族らしい。 「あたしが買ってあげてもよくてよ?」 キュルケが康一に声をかけた。 しかしルイズが立ちはだかる。 「わたしの使い魔に変なものあたえないでよ!それに剣なんか買ってもしょうがないじゃない!」 「いいでしょ。あたしが何を買おうと勝手だし、コーイチが何を貰うのも勝手だわ。」 あのー、と康一が声をかけた。 「剣って杖の代わりにならないの?」 杖はただの棒じゃないから、代わりにはならないけれど・・・とキュルケはあごに人差し指をあてた。 「でも、魔法衛視隊なんかは、大体レイピア形の杖を持ってるわね。それに、傭兵をやってるメイジで、杖の機能を持たせた武器を使ってることはあるらしいわ。」 康一は財布を握っているルイズを見た。 「どうせ買うならそういうのがいいかなぁ~。って思うんだけど・・・高くなるのかな。」 店主がすかさず割り込んだ。 「いえいえ!当店は平民用の武器だけでなく、メイジ様にもぴったりな武器も多数取り揃えておりますですよ!傭兵のお客向きの商品などは、貴族様が使う杖などよりお安くできまさ!」 意地があるので決して口にはしないが、実は康一の治療費やらなにやらで、少し懐が心もとないルイズである。 自分が知っている店は貴族用の高級な店で、かなりの出費を覚悟していただけにその言葉には少し惹かれた。 「ま、まぁコーイチがそんなに欲しいなら、考えないでもないわ。」 ルイズが同意して見せると、店主は「では少々お待ちください!」と奥に引っ込んだ。 あの貴族の小娘たちと従者。関係は良くわからないが、雰囲気は貧乏貴族ではない。 おそらくかなりの金を持っているはず、と店主は睨んだ。 笑顔で一本の長剣を抱えていく。 「こちらなどはどうでしょう。かの高名なシュペー卿の鍛えし大業物!ちょっとお値段は張りますが、鉄を紙のように切り裂くって触れ込みでさぁ!もちろん、お望みのように杖の代わりとしても使えますぜ!」 宝石や金の装飾の散りばめられたいかにもな宝剣である。 「・・・ちなみにそれ、いくらなの?」 「そうですねぇ。本当はエキュー金貨で2500はいただきたいところですが・・・今回は、2000エキュー。新金貨なら2500で結構でさ!」 「2000!?ちょっとした家屋敷が買える値段じゃない!」 「いいものは値が張るものですぜ?命を懸けるものですからねぇ。」 店主がもっともな顔をして言う。 ルイズは顔をしかめた。 「・・・もっと安いのはないわけ?100くらいの。」 「まともな剣を買おうと思えば、少なくとも新金貨で200はしますがね。まぁそこにあるのは一律200ってものでさ。」 店主は店の隅で剣が無造作に束ねられている一角を指差した。 「しかし、貴族様の従者に持たせるには、あのあたりの凡庸なのは少々物足りないと思いますがねぇ。」 すると、突然、ガチャガチャという音とともに声が聞こえてきた。 「誰が凡庸だ、このスットコドッコイの詐欺親父!!このデルフリンガー様をそこらの剣と一緒にするんじゃねーよ!」 一行は驚いて声のするほうを見つめた。 「だいたい、そんなコゾーに持たせるならおしゃぶりのほうがお似合いだぜっ!」 「こ、こらデル公!お前はだまってろ!」 一本の錆びた長剣がカチャカチャと鍔を鳴らしているので、タバサがするりと引き抜いた。 「こら!小娘!勝手に触ってんじゃねぇよ!」 タバサはそんな剣の罵声に耳を貸さず、しばらく見つめてから康一に手渡した。 「インテリジェントソード」 「ま、まさかこの剣がしゃべってるのかぁ~!?」 康一は手に持ってしげしげと剣を眺めた。でもスピーカーはついてないしなぁ。 すると、それまで騒いでいた剣が、突然黙り込んだ。 「・・・おでれーた。おめぇ『使い手』か。」 「『使い手』ってなに?」 当然ながら今まで剣など触った事もない康一である。 「俺の柄を握ってみろ。」 言われるがままに、両手で柄を握ってみる。 すると、康一の左手のルーンが青白く光を放ち始めた。 キュルケが叫んだ。 「だ、ダーリン!手のルーンが光ってるわよ!?」 前ページ次ページS.H.I.Tな使い魔